親の薬、「ちゃんと飲めているか」いつも不安ではありませんか。 認知症が進んでくると、飲んだこと自体を忘れる、逆に「まだ飲んでない」と 思い込んで重ねて飲んでしまう、薬そのものをどこかにしまい込んで 見つからなくなる——そんな「服薬管理」のトラブルは、 介護のなかでもとくに起こりやすく、しかも見落とすと危険な困りごとです。
私も母の介護で、この壁にぶつかりました。「今朝はもう飲んだ」と本人は言うのに、 薬のシートを見るとまだ残っている。逆に少なくなっている日もある。 本人を疑いたくないのに、確認せずにはいられない——このジレンマ、 経験した人にしか分からないつらさがあります。
なぜ服薬管理が難しくなるのか、3つの理由
- 「飲んだこと」自体の記憶が抜け落ちる——短期記憶の低下で、数分前の行動を覚えていられない
- 薬を「大事にしまう」ことで逆に迷子になる——本人なりに大切に保管しようとした結果、置き場所を忘れて重複購入や飲み忘れにつながる
- 家族が四六時中そばにいられない——共働き・遠方に住んでいるなど、毎回の服薬タイミングに立ち会えない現実的な事情がある
大切なのは、「本人の意思の問題」ではなく「記憶の仕組みの問題」だと 家族側が理解しておくことです。責めても本人は悪気がなく、 むしろ「疑われた」という感覚だけが残ってしまいます。
→ 親の介護と自分の更年期が重なる「ダブルケア」で悩んだときはこちら
今日からできる5つの対策
1. 1週間分をひと目で見える「お薬カレンダー」に一本化する
薬袋のまま渡すと、本人にとっては「同じような袋がいくつもある」状態になり混乱します。曜日・朝昼夕晩のポケットが壁にかかっているタイプにまとめると、 「今日の欄が空なら飲んだ、埋まっていればまだ」と本人も家族も一目で判断できます。
2. 「飲む場所」を1か所に固定する
テーブルの上、いつも座る椅子の横など、薬を「置く・飲む」場所を1つに決めると、 探し回る負担が減ります。カレンダーもその近くに掛けておくのがコツです。
3. 声かけは「飲みましたか?」ではなく「一緒に確認しましょう」
「飲んだ?」と聞くと、覚えていないこと自体への不安からとっさに「飲んだ」と答えてしまうことがあります。 問い詰めず、「カレンダー見てみようか」と一緒に確認する形にすると、 本人のプライドを傷つけずに事実を把握できます。
4. 予備の薬・余った薬は家族が管理する
本人の手元にはその日に飲む分だけを置き、残りやストックは 家族が別の場所で管理します。誤って多く飲んでしまう・古い薬を混同するといった リスクを減らせます。
5. 気になる変化は自己判断せず、早めにかかりつけ医や薬剤師に相談する
飲み忘れ・飲み過ぎが続く、薬を嫌がるようになった、といった変化が見えたら、一包化(1回分をひとまとめにしてもらう)や服薬タイミングの見直しを 相談できます。ケアマネジャーや訪問看護が関わっている場合は、 気づいたことをそのつど共有しておくと対応が早くなります。
壁掛けお薬カレンダー(1週間・朝昼夕寝る前)をAmazonで見る服薬支援ロボットが使えず、犬の自動給餌器で代用してみた話
カレンダーだけでは限界を感じ、決まった時間に自動で薬を出してくれる「服薬支援ロボット」も検討しました。 自治体によっては介護保険の福祉用具貸与や独自の補助制度でこうした機器を借りられる場合があるのですが、私が住む自治体の制度には対象品目として含まれておらず、条件に合いませんでした。 購入するには金額もそれなりにするため、いったん見送ることに。
代わりに試してみたのが、ペット用の自動給餌器です。 時間を指定するとフタが開いて中身が出てくる仕組みは、服薬支援ロボットとほぼ同じ発想。 1回分の薬をあらかじめ小分けにしてセットしておけば、決まった時間に自動で「今日の分」だけが出てくるようにできました。
- 本人にとっては「ごはんが出てくる感覚」に近く、抵抗感なく受け入れられた
- 1回分ずつ小分けにしてセットする手間はあるが、それ以外は完全に自動
- 出てきた分だけを飲む形になるので、まとめ飲み・重複摂取の防止にもつながった
- 「物を取られる」不安が強い方には、思わぬ安心材料にもなった
認知症では、大切な物をしまい込んだ末に「誰かに盗られた」と感じてしまう不安(物盗られ妄想)が 現れることがあります。給餌器の中の薬はタイマーで開くまで本人も家族も取り出せない構造のため、 「決まった時間になれば、自分の分がちゃんと出てくる」「誰にも取られない」と 本人なりに納得できたようで、薬をめぐる不安がやわらいだ様子が見られました。 薬の保管場所を巡って疑心暗鬼になっていたご家庭では、 こうした「本人も家族も手を出せない」仕組み自体が安心材料になることもあるかもしれません。
※ペット用の給餌器はあくまで転用であり、服薬管理を目的に設計された医療機器ではありません。 湿気やフタの開閉精度など、薬の保管・管理として本来想定された使い方ではない点には注意が必要です。 本格的に導入する場合は、まず薬剤師やケアマネジャーに相談したうえで、 自治体の服薬支援機器の補助制度が使えないか改めて確認することをおすすめします。 我が家の場合は「使えるものがなかったので、ひとまずの代用でうまくいった」という一例としてご参考まで。
うっかりやりがちな落とし穴
- ❌ 「なんで飲んでないの」と問い詰める→ 本人は覚えていないだけなので、責めても解決しない。むしろ不信感が募る
- ❌ 薬袋をそのまま何日分も渡す→ 同じような袋が並ぶと本人には区別がつかない
- ❌ 家族一人で抱え込む→ 毎回の声かけを一人で担うと共倒れになりやすい。同居家族・ケアマネ・薬局と役割を分担する
- ❌ 「様子を見よう」で先延ばしにする→ 飲み忘れ・飲み過ぎは体調に直結するため、気づいた時点で早めに相談するほうが結局ラク
まとめ:責めるより「仕組み」で防ぐ
| 困りごと | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 飲んだこと自体を忘れる | 短期記憶の低下 | お薬カレンダーで「見える化」 |
| 薬をしまい込んで迷子になる | 本人なりの「大切な物」意識 | 飲む場所を1か所に固定 |
| 問い詰めると事実が出てこない | 本人の不安・プライド | 「一緒に確認する」声かけに変える |
| 誤って多く飲んでしまう | 手元にストックがある | その日の分だけ渡し、残りは家族管理 |
| 変化に気づいても様子見してしまう | 相談するタイミングが分からない | かかりつけ医・薬剤師・ケアマネに早めに共有 |
| 自動化したいが服薬支援機が自治体制度に合わない | 対象機器・条件は自治体ごとに異なる | (あくまで代用例として)ペット用自動給餌器を転用 |
服薬管理は、家族が完璧にやろうとするほど疲れてしまう部分です。「仕組み」で防げるところは仕組みに任せ、家族にしかできない見守りに エネルギーを使う——そんなふうに力を抜いていいのだと、 私自身、介護のなかで少しずつ学んでいるところです。




